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2009年9月29日 (火)

カムナビ

Kamunabi

オーパーツともいえる、超高温でなければ作い得ないブルーガラスで出来た古代土偶の謎を追っていく内に、古代日本の未だ解明されてない謎に迫っていく…といったお話。

大仕掛けな娯楽SF小説を書かせたら、天下一品なこの作者。
今回は、日本の邪馬台国をテーマにした物語と、いつもと違ってノンフィクション的色彩に最初やや面食らった。
というより、日本史の謎を探るといったかなり硬派な内容で、星野之宣ばりの内容に、ちょっと拍子抜けしてしまったのが正直な所。
展開も地味で、いつもと違うなぁ…と思ったのは上巻まで。
下巻からいきなりいつもの?ケレンミ溢れる展開に。
特にクライマックスは急転直下のごときど派手は展開(笑)。
でも、主人公がもう1つ積極的性格でないがゆえに、この作者のこれまでの作品に感じた、突き抜けるような盛り上がりはなかったかなぁ…。

相当下調べしてるのは、読んでてすごく感じるところで、歴史小説としては、この上なく派手だとは思う。
でも作者のこれまでの作品のようなエンターテイメント志向な小説としては、やや地味な印象もある。
それも、この作者への期待が大きすぎるが故なのかもしれないけど。

それよりこの本が出版されたのが1999年で、以後今日まで大作を書いてないのが残念でならない。
不況とはいえ、これ程の作者が新刊を出せてない(?)世の中って、おかしい。

2009年4月26日 (日)

イニシエーション・ラブ

友人から強く薦めらて、読んでみた。
ミステリー作家の書く、トリック小説らしい。
ラスト2行で大どんでん返しが起こると、裏表紙にも書かれた文言が、俄然興味を引く。
内容は、'80代のあるカップルの恋愛模様を描いた、何てことはないお話。
どんでん返しが起こるという言葉を期待して、最後まで読んではみたものの、最後まで読んで・・・だから?というのが正直な気持ち。

内容的に、色々複線は貼ってはあったけど、むしろ肝はその体裁というか構造に仕掛けが施された。
でも基本的なお話自体がつまらないという印象は如何ともし難く、ギミックが凝ってたからといって、取り立てて感動も感心もしなかった。
そもそも複線を張りまくった小説なんて、他に幾らでもある訳で。
まあ構造的に凝ってるのは間違いないんだろうけど、凝り具合でいえば、先日読んだ“新しい太陽の書シリーズ”なんかの方が遥かに凝ってる。

せめてお話自体がもう少し面白ければなあ。(以後、ネタバレな余談)

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2009年4月12日 (日)

ホルモー六景

Horumo_rokkei正直、この本の存在は最近まで知らなかった。
そもそも私が鴨川ホルモーを読んだ後、軽く薦めた友人がそれを読んだ後に見つけて買い求め、お返しとばかりに私に貸してくれたのがこれ。
タイトルの通り、六つの短編集で、鴨川ホルモーのサイドストーリーとなっている。

でもここにある短編は、本編と違って、どれもあまり笑いを志向していない。
むしろ叙情性の強い、ラジオドラマにでもなりそうなさわやかな小品ばかりで、そこが私としては少し物足りない。
最初の「鴨川(小)ホルモー」こそ笑える話だったので、期待して読み進めてみれば、ええーっ?てな感じで。
しかも短編なのに続編を想起させるような話まであるのだけど、どれも半ば無理矢理話を広げてるような感じで・・・。
作者絶対この先は考えてないだろうなぁ。

そんな感じで、映画だけ見た後でこれを読むと内容的に辛いと思うけど、原作を読んで気に入った人なら、変に期待しなければファンブック的には楽しめると思う。
(本書はあくまで原作の外伝的な本なので、映画の続きにはあまりなってないのだ)

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2009年4月10日 (金)

うそうそ

Syabake_5シリーズ5作目にして、ようやくの長編物。
2作目以降、ずっと短編が続いてたので、久々の長編を期待してたのだ。
読んでみると、今回は湯治に出かけた若だんな一行が巻き込まれた事件簿といったお話で、登場人物も多く、かつそれぞれの思惑が入り混じった感じのドタバタ劇な趣向になっている。

こういう冒険記のようなお話が駄目というつもりはないけれど、私はどちらかといえばミステリー風味なお話の方が好きかなあ。
そもそもこのシリーズ、ここまで時は少しづつ進んではいるけれど、人間関係に本質的変化を来すほどでもないので、少々マンネリも感じてきたなあ。
今回も、展開がちょっと強引だなと思える感じもしたし。

そろそろ何か大きなアクションを起こす必要があるのではないのかなと思う今日この頃。

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2009年3月28日 (土)

鴨川ホルモー

Horumo

京都を舞台にしたこの本には、以前から興味があり、一度読んでみようと思ってた。
そんな折、先に同じ作者の「鹿男あをによし」がTVドラマ化され、見たらこれがえらく面白い。
続いてこちらも映画化が決まり、それに合わせて文庫になったのを機に、買い求めた。

鴨川ホルモー…タイトルからその内容を想像できる人はまずこの世にはいまい(笑)。
京都在住の大学生のお話で、基本的にはユーモアファンタジーとでもいうべきか。
主人公は、プライドが高い割には、その実片思いに悶々としているキャラ。
個人的にはちょっとシンパシーを感じるのだけど(笑)、ただ小説の主人公としてはあまり魅力的なキャラとも思えず、読むペースも序盤なかなか上がらなかった。
それが、途中から一気に展開していく。
いきなり急展開し過ぎだろと思いつつ、それにしても主人公の周りの人物は結構魅力的で、特に高島は私的ツボ過ぎるキャラ。
彼がこの小説の笑いを一手に担ってるといっても過言じゃないでしょう(笑)。

お話自体は荒唐無稽だけど、出てくる登場人物達はみな現実にいそうなキャラばかりで、妙にリアリティを感じてしまう。
特に、かつて京都で学生を謳歌してた人なんかが読むと、猛烈なノスタルジーに襲われるんじゃないか。
まあ例えそうでなくても、小説の面白さが半減する事はないけれど。
軽いお話なんだけど、割と余韻を残すいい読後感があった。

この後、映画も公開されるし、そちらも楽しみだなぁ。 

2009年3月15日 (日)

ねこのばば

Nekonobaba

前作の「ぬしさま」を読んだときは、このシリーズの先行きにちょっと不安を感じたけれど、本作で結構持ち直した感がある。
ひとえに六篇から五篇に減らしたせいではないかと思う。
いつもはほほんとした話が多いのだけど、今回はちょっとホラーっぽいのあり、しんみりするのありと、色々作者も工夫を凝らしてる。
でもここまで読んで、基本的にこのシリーズはミステリー路線で行くんだなというのはほぼ見えた。
妖(あやかし)が絡んでくるミステリーというと、どうしても京極夏彦が思い出されるけど、ちょっと毛色が違うし、何よりこちらが断然読みやすい。
ほぼライトノベルといってもいいかもしれない。
でもただのドタバタになってないのがいい。
取り合えず、あと2冊かぁ。

2009年3月 8日 (日)

ぬしさま

syabake_2

一作目の「しゃばけ」の続編という事で期待して読んだけど、正直ちょっと肩透かしを食らった感じ。

本作は六編の短編からなっていて、各々お話もそんなに捻ったものはない。
大体が毎回小さな事件が起って、若だんなが妖(あやかし)の協力を得て、事件を解決するといったミステリーもの。
それ以外は、前作「しゃばけ」のサイドストーリー的なもので、単独の本としては何とも印象が弱い。
それこそ、ちょっとしたファンブックのような感じもする。
次を読むのがちょっと不安になってきたぞ。 

2009年3月 5日 (木)

しゃばけ

Shabake

こんなに面白い小説だったとは…。

日本ファンタジーノベル大賞受賞作という事で、以前から注目はしてたけれど、所詮は優秀賞(=次点)。
過去に読んだ他の優秀賞受賞作の印象からも、まあ過度な期待はせず読み始めたのだけど、そんな気持ちはあっさり裏切られた。

江戸の町を舞台に、この世に住まう妖(あやかし)達が何故か見えてしまう、大店の病弱な若旦那を主人公にした、ファンタジーなのにミステリー仕立てで、しかもどこかコミカルなお話。
妖(あやかし)を、いわゆるキワモノとして書いてない所もいいけれど、何よりこの世界に生きる江戸の町の様子が、読んでて生き生きと脳裏に浮かんでくる。
大賞を取れなかったのは、ライトノベル的ともマンガ的とも思えるこの軽いテイストと、際立つ個性の希薄さゆえかな。
それはそれで間違ってるとは思わないけれど、ただこれが受賞後、今に至るまで人気シリーズとして続いているのは、どこか胸のすく思いもしてしまう。

それにしても作者って、元マンガ家だったのね。
ほんと読んでて情景がまざまざと目に浮かぶのは、そのせいなんだろか。
とりあえず、このシリーズはまだまだき続きがある。
楽しみだなあ。 

2009年3月 3日 (火)

ジェネラル・ルージュの凱旋

Jeneral

読み終える前に、映画を先に見てしまったけれど、特に問題はなかった。
というのも、原作とは結構展開が違ってるので、どちらから見ても、そしてどちらから先に見ても、多分どちらも楽しめる。
でも、やはり原作は偉大だ。
内容が、映画よりずっと緻密。
(というより映画は、キーパーソン的な登場人物を余りに端折りすぎ)
原作は特に、二作目の「ナイチンゲール~」と、完全に内容が対になっているので、そちらを先に読んでると、二倍楽しめる。

この三作目まで読んで改めて分ったのは、これは東城大学付属病院を中心としたお話のシリーズであって、作者は必ずしもミステリーにこだわってないんだなと。
少なくとも今回は、いわゆる殺人事件の類は一切なかった。(ここら辺が映画とは違う)
但し、会話主体の読みやすいキャラクター小説でありつつ、日本の医学界のヘビーな問題を扱ってるのは相変わらずで、お話はダイナミック。
そして、何より読んでて痛快。
派手さはないけれど、個人的にはこれがシリーズで一番エンターテイメント性が高いと思う。
(但し四作目は未読)

http://tkj.jp/general/ 

2009年2月18日 (水)

ナイチンゲールの沈黙

Nightin

先日映画化もされた「チーム・バチスタの栄光」に連なるシリーズの一遍。
そもそも、間もなく公開される予定の続編「ジェネラル・ルージュの凱旋」を公開前にと読んでたら、実はそれはシリーズ三作目で、二作目は別にあると知った時、既に「ジェネラル~」上巻(文庫版)を8割方読んだ後だった。
どうしたものかと迷ったが、やはり一旦そちらを中断して、二作目のこっちを先に読む事に。

読み始めて驚いた。
この二作目は、三作目「ジェネラル~」と同じ病院内で同時進行で起ってる話だったのね。
各々主人公こそ違うものの、登場人物はかなりかぶっているし、折々に同じ場面も当然のように出てくる。
まだ作家としてのキャリアは短いのに、よくこんな複雑な話を書き上げたもんだと感心する。
しかも作者、「バチスタ」の頃より文章が達者になってるのが感じられるし。

ただ正直、ミステリー小説としては、微妙な印象もある。
決定的な違和感は、一作目の「バチスタ」と違い、このお話がSFやファンタジーの要素も含んでいる点。
前作のような硬派なミステリー小説を期待して読むと、失望する人も多かろう。
二作目を飛ばして、あえて三作目を映画化した理由も、そこら辺に理由があるのかなと推察してみたり…。
ただ私のように、このシリーズをキャラクター小説だと認識してた人にとって、この物語の持つダイナミックな展開には、一定の満足感は得られた。
とにかく、このあと読む予定の三作目がいよいよ楽しみになった。

http://tkj.jp/nightingale/

2008年7月13日 (日)

シャドウ・パペッツ

Puppets ビーンが主役のシリーズ3作目。
どうやらこのシリーズは全四巻らしいのだけど、現在日本で発売されているのはこの本(第3巻)まで。
読み進めるのを惜しみつつ、ゆっくり読んだ。

物語は前巻の続きで、中国を中心とした世界大戦の様相を呈しつつ、アシルが着々と自分の野望を上り詰めようとしていく。
そういった状況下にあって、ビーンとペトラのラブラブぶりは、予想してたとはいえかつてない展開で若干戸惑う(笑)
方や、ピーターの両親(つまりエンダーの両親でもある訳だけど)がこれほど活躍するとは思わなかった。
ヴィッギン家のそれぞれの人となりが分って、楽しめた。

戦争の方は、色々風呂敷を広げながらも、意外とあっけなく収束する。
それなりにリアリティは感じさせるものの、ちょっと無理があるように思える部分もあったかな。まあ許容範囲だけど。
ひとまずバガー戦役(エンダーズ・ゲーム)から続いた騒動は、この巻で一応ケリはついた。
次の最終巻では、恐らくビーンとピーターの2人の人生を語る、いわばシリーズのエピローグのようなお話になるんだろうと思う。
楽しみだけど、原書が出てから数年経つのに、未だ発売予定がないなんて。
よもや、予定だけで昨今噂がぱたりと途絶えた映画待ち?(オースン・スコット・カード/早川文庫)7/13

2008年5月18日 (日)

砂時計 (全10巻)

C9ylqjq8 映画を見て、これって原作コミックだとどうなの?と少し気になり、ネットカフェで一気読み。
全10巻というのは知ってたけど、実際は全8巻で、後り2巻は番外編だったのね。

少女漫画だった。
映画のようなシリアスさはさほどでもなく、昼ドラにもなった事から、もっとドロドロな恋愛ドラマがあるのかと思ってたらそういう事もなく、むしろややコミカルで、軽さがあった。
でも根っこにあるテーマは、初恋であって、そこら辺まさに少女向けだなと。
きっちり描けてるとは思っても、私にとって、さして面白いお話じゃなかった。

意外だったのは、映画は原作を思ってたほど端折ってなかった事。
映画じゃほぼ触れられなかった、藤兄妹絡みのエピソードが多かったのは、まあ予想通り。
意外だったのは、主人公杏のお父さんが再婚し、子供まで作ってた事。
大人になってからのエピソードは、原作でもあまりなかった事。

でも、映画は母親の死をよりクローズアップした事で、原作と雰囲気は大きく変わってしまった。
完成度はそれなりに高いと思うけど、まず原作ありきで見る人にとっては、受け入れ難いものだったかも知れない。
でも私は、あえて言えば、映画版の方がしっくりくる。(芦原 妃名子/フラワーコミックス)

2008年4月15日 (火)

拷問者の影

Newsun1 “新しい太陽の書”という四部作のシリーズ第一作目。
シリーズとして、世界幻想文学大賞・ネビュラ賞・ローカス賞等を受賞しており、相当面白いらしいと噂を聞いていたので、入手してみた。

異世界を舞台に、拷問者という、何とも陰鬱な職業の少年が主人公のこの本は、彼が若かった頃の回想録という形で書かれている。
とにかく、世界観が相当に異質で、それを細部まできっちり構築されている。
それだけに、こちらも想像力をフルに働かせて読まないと、話についていけなくなりそうで、取っ付きはかなり悪い。
ほんとにこれが面白い本なのかと、かなり疑念を持ちながら、のろのろ読んでた。
それが、徐々に状況が見えてくるにつれ、むしろその濃密な世界観に何時の間にか引き込まれてしまった。
とにかく先が読めない。
話もなかなか先に進まないんだけど、それがむしろ面白いと感じてしまう。

早川SF文庫なので、最初ファンタジー要素のあるSF小説と思ってたら、むしろSF要素を少し含んだファンタジー小説だったという印象。
ただこれだけ分厚く、文字もびっしりな本一冊費やしても、世界の全容はまるで見えてこないし、話も途中で終わってる。
何だかこの作者、物凄い世界を構築してそうな?

ところで、そんな濃密かつ膨大な世界なので、ちょっとでも知識を整理したいと、この本について書かれたページを少し覗いてみた。
・・・皆、話の核心を、何の配慮もなく普通に書いてるしsad
ちょっと見てしまい・・・この物語の凄さの一端を知ってしまいました。

因みにこのシリーズ、今月から表紙を小畑 健(デスノートの人)に代え、新装版として発売されるそうな。
もし、これからこの小説を読むのなら、シリーズ最後まで読み終える前に、世界観の理解を深めようと、検索なんてしない事を、強く強くオススメする。(ジーン・ウルフ/早川文庫)

2008年4月 1日 (火)

シャドウ・オブ・ヘゲモン

Jqzlbcsa
エンダーズ・シャドウ」の続編で、シャドウシリーズの二作目(上下巻)。
前作でバガーとの地球存亡をかけた戦いが終わった事で、今度は国家間での争いがくすぶり始め、それにビーン達も否応もなく巻き込まれていく…といったお話。
今回は、第三次世界大戦ともいえる内容になっている。
後書きを読むに、どうも作者は戦争に関わる人の感情や動機を内包した、歴史モノを書きたかったらしい。
近未来のお話とはいえ、現実に起ってもおかしくないシチュエーションで、SF小説とは言えないような印象すら感じさせる。
ただエンターテイメント性は高い。
特に下巻は怒涛の展開で、一気に読みきった。

前作がビーンの一人称のお話だったのに対し、今回はビーン、ペトラ、ピーターの3人の視点が随時入れ替わる、ザッピング形式になっている。
想像するに、今後の展開として、主人公がビーンからピーターに移行する(もしくは2人が主人公になる)布石かなと勘ぐってみたり…。
いずれにしても、このシリーズは抜群に面白い。

しかし、作者がコンピューターゲームの三國志が好きだったとは…。理解できてるのかな?(オースン・スコット・カード/早川文庫)

2008年2月18日 (月)

ただ栄光のためでなく

Wvv9vepo アメリカで、オイルマンとしてのし上っていく一人の日本人の、ノンフィクション小説。
昔、友人から強く勧められ、買ったはいいけど、長らくほったらかしにしてたもの。

作者は、これが小説としてのデビュー作らしく、確かに文章はそれほど流麗な感じはないけれど、読みやすくはある。
それにしても、ノンフィクション小説という事で、もっと記録小説かそれに類する物語だと思ってたんだけど、まさかここまでバリバリのエンターテイメント小説だったとは…。
'70年代末の話という事で、時代背景の古さはあるものの、そういう事に関係なく面白い。
昨今何かと話題の、石油問題の一端が垣間見えると共に、「サラリーマン金太郎」以上の、ど派手で波乱に満ちた人間ドラマが展開されいく。
ただ、そのあまりにドラマティックさに、これがノンフィクションとは、ちょっと信じ難い。
(実際、内容に現実と矛盾するor根本的に間違った記述があって、発表当時から疑問視する声が多いそうな)
ただ一方で、当時こういう事は実際あったかも知れないなと思わせる、説得力はすごくある。
恐らく、虚実入り混ぜて書いてるんじゃなかと思ってるのだけど???(落合信彦/集英社文庫)

2008年1月 8日 (火)

エンダーズ・シャドウ

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傑作。
「エンダーのゲーム」を別人物(ビーン)の視点で語り直すという趣向自体面白いと思うけれど、そんな期待を越えてた。
同じ話を単純にトレースしているのではなく、あくまでビーンの物語として成立していて、先の「エンダー〜」の補完的内容や外伝的お話で終わってない。
だから物語もより重層的だし、先の展開は分ってるのに先が読めない。
また、その人生の過酷さにおいて、ビーンはエンダーに負けず劣らず凄まじい。
そしてその天才ぶりも。

1つの独立したお話になってるけれど、この物語は先に「エンダーのゲーム」を読んでた方が絶対に面白い。
そして読んだ人なら多分、何気ないシーンでもぐっと来るものがある(はず)。

“ゲーム”以降、どちらかといえば文学的ウエイトが大きかった同シリーズで、久々にSFエンターテイメント性の高い、スカッとさせる内容。

そして“ゲーム”以後の地球のお話は、ここからビーンを主役に続いていくようで、何にも増して嬉しい限り。(オースン・スコット・カード/早川書房)

2007年12月18日 (火)

チーム・バチスタの栄光

Swlc_ylo 近々映画も公開されるらしいこの小説。
流行に便乗して読んでみた(笑)。

病院を舞台にした一人称のミステリー小説。
読み易いけれど、これといった驚きもなく、坦々と話が進んでいく。
それが下巻で、大転換が起る。
小説が半ばを過ぎてから、真の主人公が出てくるなんて(笑)。
しかもそこからは雰囲気も一変し、ややドタバタコメディ的展開も見せつつ、事件はあっさり解決する。
そして、やけに冗長なエピローグ。

ややあざといとも思ったけど、登場人物はみな個性的で、映像化しやすいだろうなとはまず思った。
そして医療犯罪を扱った、一般人には興味深い話でもある。
でもちょっと食い足りなかったなぁ。
せっかく読者目線に近い主人公なのに、読者が事件を推理するための条件を全て提示されなかった事もそう。
何より、内容も文章も軽い。
医療現場の抱える問題を指摘する、硬派なメッセージも入ってるのに、これといった感慨を残さないのは、作者の筆力のせいだろうか。
まぁそれも本格推理小説を期待してたがゆえの残念感なんだけど。
でもこの軽さ、とっつきの良さが、逆に大衆受けする必須要素なのかもなあ。

にしても、単行本1冊の話をどうして文庫で2冊にするかね。
元々文章量も多くないのに・・・ちょっとやな感じだなあ。(海堂尊/宝島文庫)

2007年12月 3日 (月)

投資顧問 (遙かなる地平1)

N79mn67o エンダーシリーズの外伝というべき短編があるのを知ったのは全くの偶然だった。
「遙かなる地平1」(ハヤカワ文庫)なるアンソロジー本に入ってるなんて、普通の読者には分らないって。
本屋で確認してみると確かにあった。
30分もあれば楽勝で読めてしまう短さなので、そのまま立ち読みする(汗)。
「投資顧問」とはエンダーシリーズらしくないタイトル。
これはエンダーが20才になって納税義務が発生する事で起るちょっとしたドタバタで、色々とシリーズの内容を補完するエピソードが含まれている。
意外にタッチも軽くて読みやすい。
ほんと、エンダーシリーズは短編に至るまでお話の雰囲気が毎回違うのな(笑)
シリーズを読み続けてきた者としては、結構楽しめた。

でも、幾ら有名作家達の有名作品の外伝を集めたアンソロジーとはいえ、この短編がこのシリーズを未読の人には殆ど楽しめない内容なのは間違いないだろう。
こういう形で別の本に掲載するのはどうかと思うなあ。
もしくはこの短編を「エンダーの子どもたち」のおまけとして転載する配慮はあって良かったんじゃないのかなぁ。(オースン・スコット・カード / 早川文庫)

2007年11月10日 (土)

エンダーのこどもたち

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間をあけつつ読み続けてきたエンダーサーガの、これが最後の物語。

過去3作品は、各々テイストがかなり違った物語だったけど、でもこの4作目に限っては、これまでのような強いテーマ性は感じられず、前作「ゼノサイド」の純粋な続編とも、あるいはシリーズ全体のエピローグ(クライマックス?)編ともいえそうな、ある種普通なお話に、若干肩透かしを食らった印象はあった。
といっても、大きな不満がある訳ではない。
やや強引な展開だなと思った所はあったけど、相応の山場も用意しつつ、綺麗に大団円で終わりを迎えている。
特に終盤の宇宙遊泳シーンの台詞なんて、ウイットが効いてて、ニヤッとしてしまう。
ただ1つ引っかかったのは、このお話での日本の扱い。
作者の後書きを読むと、作者が日本についてそれなりの勉強をし、また遠藤周作や大江健三郎に多大なる思い入れがあるのが伺える。
そのせいか、やや強引に日本をこの物語の重要な要素として組み入れようとした印象がある。
しかもそこで描かれる日本が、幾ら超未来とはいえ、日本人の目から見て余りに違和感があり過ぎる。
例えば日本人の植民星の名前が「神風」で、民族の心の拠り所が「大和魂」だなんて、なんて西洋人的(苦笑)。
せめて、書く前に誰か生きた日本人に直接アドバイスを受けて欲しかった。

そしてシリーズは、これで一応の終わった訳だけど、ただどうもまだ続きそうな余地を残してるのが気になる。
デスコラーダの謎がまだ解明されてないのもそうだし、新たな主人公となるべき人物も既に登場しているし…(笑)
でも、とりあえずはもう1つのスピンオフシリーズであるシャドウシリーズを読まないと。(オースン・スコット・カード / 早川文庫) 

2007年10月 9日 (火)

ゼノサイド

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エンダーシリーズの3作目。
1作目は宇宙戦争のお話、2作目が宇宙開拓史のお話と、まるっきりテイストの違う物語だったけれど、本作は惑星存亡を賭けたお話。
シリーズ最大のこの長編は、2つの話が同時並行で進んでいく形をとっている。
1つは前作から30年後のルジタニアでのお話であり、もう1つはパスという中華系民族の惑星でのお話。
一見全く違う2つの話のようだけど、振り返ってみればどちらも死生観というテーマが根底にあるように思う。

序盤からしばらくはお話として大きな動きもなく、最後までこの調子でいくのかなと思い始めた頃、2つの別の話が徐々に交わり始め、怒涛の後半へと流れていく。
それもSF的嗜好に溢れたもので、また先が読めない。
さらに終盤、意外な人物が登場するに至っては、こんなの有り?と思ったほど。
いやー、この期に及んでまだ盛り上げるか(笑)

それにしても重厚な哲学論や宗教観を語りつつ、娯楽小説として物語を展開していく作者の力量には、本当に感心する。
その上海外SF小説では珍しい(と私は思ってる)、叙情性もある。
翻訳が上手いせいかもしれないけど、オリャードとバレンタインの会話シーンなど、思わずぐっときた。(オースン・スコット・カード / 早川文庫)

2007年6月22日 (金)

四捨五入殺人事件

Prds1f1u 井上ひさし氏の本はこれまであまり読んできてないけれど、この人が推理小説を書くなんて珍しいのでは?
そんな好奇心から気まぐれに買ってみた本(それもかなり前に…笑)。

天災により、外部から孤立した田舎の寒村での密室連続殺人というシチュエーションは、おどろおどろしくもあり、どこか横溝正史っぽい感じもする。
なのに主人公(達)は、終始旅行者気分でのほほんとしており、そのギャップに妙なユーモアさがある。
すらすら読めて、心地いい。
元々そんなボリュームのあるお話ではないので、推理小説としては筋立てがシンプルで、やや食い足りないなぁなんて思いも持ちつつ読んでたのだれど、最後の最後にかまされた。
これはアリなの?という気持ち半分、やられたーという気持ち半分(笑)
まあ結局の所、結構面白く読めたんだけど。
骨太な本格推理小説とはいえないけれど、骨太なテーマはちゃんとあって、この作者らしいお話だと思う。(井上ひさし/新潮文庫)

2007年5月19日 (土)

青の時間

2qwigi8t 幼少児の頃に見聞きした絵本やマンガ、小説などが、後になって知らず知らず原体験として深く記憶に刻まれる事がある。
この物語には、何故かそういう類のノスタルジーを強烈に喚起させられる、懐かしい不思議な感慨を抱かせる。

ラジオドラマを聞くともなしに聞いたのが、そもそものきっかけだった。
年齢、国籍、あるいは存在さえ謎めいた世界的高名なマジシャン、ブルー。
フリーの広告企画屋である主人公は、何のコネもないままブルーを初来日させるよう大手広告代理店から駄目元オファーを受ける。
途方に暮れる中、突然ブルーの代理人と名乗る者から連絡が来、そして訳の分らないまま、あっさり契約が決まる。
一体ブルーは何故日本に来るのか。そして何故会った事もない自分を指名してきたのか。
公演日が近づく中、主人公はその日本公演が、彼の人生最後の公演になるらしい事を知る・・・。

とにかくミステリアスで、幻想的で、気が付けばそのラジオドラマに引き込まれてしまってた。
とはいえ毎回必ず聞けた訳ではなかったので、話の全貌は掴めないままだった。
そこで折を見ては原作小説を探して(なかなか売ってない!)、漸く読むことができた。

ラジオドラマから感じた雰囲気そのままの小説。
冷たい透明感があって、でもほのかに暖かい所も感じられる。
穏やかで、流れるような文体は、この作者の特徴だろうか。
主人公はおじさんといっていい年齢だけど、やはりこの本は青春小説といっていいと思う。
オチが若干弱いと思ったけど、このオチでなければこうも余韻が残らなかったかも知れない。
そんな余韻を、今もふと感じてしまう時がある。(薄井ゆうじ/ハルキ文庫)

2007年4月 2日 (月)

古い骨

Hvalwt0c アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作」という事で何気に購入。
主人公の設定が少し変ってて、探偵ではなく人類学教授で、専門分野は骨の分析。
ある日、古い館の主が海で事故死するのだが、その後、城の地下室の床下から謎の古い人骨が発見される。
主人公は、成り行きからその白骨死体を検分する事になるのだけど、さらに館で殺人事件が起こり…、といった筋立て。
読者に挑戦するといった大掛かりなトリックもなく、ワトソン役といえるFBI捜査官との軽妙な会話によって、物語はすすんでいく。
本格推理小説と思ったら、実は探偵TVドラマのノベライズでした的お話には、少し肩すかしを食らった気はした。
でも、サスペンス小説と思って読めば問題はない。
それどころか、お話が中だるみもなく最後まで楽しく読めたのは、私にとっては珍しい事。
また、登場人物達もなかなか愛着を感じさせるキャラクターで、何というか、シリーズ物の第一作目を読んだような感じ。
と思ったら、実際シリーズもののようでした(苦笑)。
ただ解説によると、本書はシリーズ第4弾との事(意外)。
元よりトリックに重きを置いた作風でもないので、このシリーズは他も結構期待できそう。

それにしても、この本って街の名所やレストランでの食事の描写が、まるでタイアップしてるかのように、やけに細かくてリアル(笑)。
シリーズみんな、こんな感じなんだろうか? (アーロン・エルキンズ/ハヤカワ文庫)\660

2007年4月 1日 (日)

太陽の塔

Jddwnqma ファンタジーノベル大賞受賞作という事で読んでみた。
(そういや最近、この作者の本が本屋でよく平積されてるのを見かける。今や流行作家なんだろうか?)

舞台は京都。
普段からモテないむさ苦しい大学生である主人公が、元彼女の思い出に浸り、悶々とした日々を過ごす様子を追ったお話。
表面上は女なんぞいらんとばかりに自己欺瞞と虚勢で取り繕っているのだけど、その実、元彼女を軽くストーカーまがいの事までしてしまうほど忘れられずにいる。
何とも哀れで悲しいんだけど、どこか愛すべきキャラだとも感じてしまう(笑)。
ただ、これってファンタジーノベルじゃない…よなぁ?。
まあ強いて言えば、オチがちょっとそういえなくもない…か?

そんな主人公が暮らす京都の町の描写が、リアルなんだけどどこか懐かしい。
軽妙で語彙豊かな文章は、読み易くて、ちょっとシニカルで、それでいてほのぼの感が漂ってる。

男のやせ我慢というのはいつだってみっともないものだけど、そんなみっともない主人公にしては、意外なほどお話は爽やかに終わる。
ここら辺もファンタジーか?(笑)(森見登美彦/新潮文庫)

2007年1月15日 (月)

虚人たち

Pwrfaliy この本を普通の小説だと思って読むと、恐らく失望する。
私がまさにそうで(笑)、この本が小説としてのお約束をことごとく破る事が使命であるかのような、実験色の強い小説だという事は、読み始めてから知った。

この物語の主人公は、妻と二人の子を持つサラリーマンと、ごく普通な人物像。
でもこの主人公、こうした自分のプロフィールが全て設定されたものである事を自覚している。
つまり今自分が実存している世界が、架空の物語世界である事を分っていて、まず自分がこの世界で何を成すべきか探す所から、この小説は始まる。

さらに、主人公以外の登場人物達も、お互いがいわば“プレイヤー”で、それぞれが異なる目的を持って行動している事もお互い認識している。
まさに、これってロールプレイングゲームそのものな世界。

でも、この本が書かれた当時は、まだファミコンさえなかった時代。
そんな時代に書かれた小説が、ロールプレイングゲームをイメージして書かれてるはずもなく、発表当時さぞや斬新で新鮮なものに見えたんじゃなかろうか。
それはこの小説が後に泉鏡花賞を受賞してる事からも推察される。

でも今は出版当時と同じように、この話を斬新で刺激的なものと感じる事はできない時代になってしまった。
まあこの小説の実験的要素は、他にも色々あるけれど、かく言う私自身、このモノローグだけで進行し、話もどんどん本筋から外れていく展開は、退屈であり苦痛だった。
途中で読むのを止めようかと、何度思ったか…。
そういう小説だと予め分って読んでれば、それなりに楽しめたかもしれないけれど。(筒井康隆/中公文庫)

2006年11月13日 (月)

死者の代弁者

Kmnngmlf 先日読んだ「エンダーのゲーム」の続編となる本(上・下巻)。
でもテイストが前作とはまるっきり違う事に、最初戸惑った。
例えるなら、前作がカレーだったので次もカレーだろうと思ったら、トムヤンクンだった位に違う(何のこっちゃ)。
要は続編として当然期待されるストーリー展開を、この続編は全く配慮していない。
なのに、この本は前作と主人公が同じエンダーで、またそのテーマも、前作の知識なしには成立しない。
作者、ものすごく強気(笑)。

それでも読んでみた。
かなり地味な話で、まるでSF的じゃない。
でも静かで深い感動があった。そしてすごい余韻を残した。
そしてこの本が前作に続き、ヒューゴー・ネビュラ二大大賞を受賞した事から、私と同じ思いの人が少なからずいるのも間違いない。

前作から二千年後の、ある未開惑星での開拓史というべき物語で、そこに起る殺人事件を‘死者の代弁者’エンダーは解決しようとする。
舞台はSFそのものだけど、語られるお話はまさに文明開拓史。
人種、宗教、家族、そういったものがこの物語の骨子であって、堅苦しくも地味。純文学といってもいい位。
でもそれをSF的舞台の中、殺人事件というちょっとしたミステリーを仕立てて、軽快に読ませる。
最後に、それまでの伏線が次々解き明かされた時、作者の言いたかった事が分る。
作者は恐らく性善説者なんだろうな。(オースン・スコット・カード/早川文庫)

2006年10月25日 (水)

宇宙のみなもとの滝

Vo7gh_rr 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
ファンタジーの定義というとかなり曖昧なものではあるけれど、私には神話的あるいは童話的なものといったイメージがある。
その意味でこの本、かなり典型的なファンタジー小説だと思う。

地球と似た全く別世界の或る惑星の、或る小学校で、劇団を招いて劇が催される。
その劇の題名は「宇宙のみなもとの滝」。
つまり本書は劇中劇の構造を持った小説で、その劇が後半物語世界と微妙にシンクロしていく所が、醍醐味でもある。
ただその劇中劇があまりにメッセージ性の強い教育芝居で、それだけに読んでてやや堅苦しい気持ちにさせられる。
思えば「ゲド戦記」もメッセージ性の強い物語だったけど、エンターテイメント性がそれをうまく包みこんでいた。
この作者にはそこまでの技量はないのか、あるいはそれを良しと思わなかったのか。
(後書きなどを読む限り、恐らく後者だと思うけど…。)

それにしてもこの小説の舞台となる世界観の設定は、明らかにこの物語をはみだしている。
多分作者は、この世界を舞台にしたお話をシリーズ化させるつもりだったんだろうな。(山口泉/単行本)

2006年10月21日 (土)

エンダーのゲーム

Etiqffgu 宇宙人との戦争状態にある地球は、次なる大戦に備え、その地球の運命を担うべき人物を探し、自ら養成する事にした。
それに選ばれたのが、まだ6才の天才児エンダー。
バトルスクールに半ば強制的に入れられた彼は、連日過酷な訓練と苛めに晒されながら、その才覚でもって次々とそれらをクリアしていく…。

それほど独創的な話だとは思わないけれど、とにかく読ませる。
構成も上手いし、シリアスな話なのに決して暗くなってない。
所々翻訳がぎこちないのをものともせず、読んでてぐいぐい引きこまれた。
強いて言えば、二大SF大賞受賞作の割に話の展開は地味目かなぁ…なんて思ってたら終盤、大どんでん返しが。
驚きはなかったけれど、作者のその仕掛けに感心した。

ただ少し残念な点もあって、この話は本来二重構造になっていて、1つは宇宙におけるエンダーのお話、もう1つはエンダーと同じ才覚を持つ2人の兄弟による地球でのお話、となっている。
後者は哲学や政治的要素も絡んだ、かなり面白い展開がありそうなのに、ほぼアウトライン程度しか触れられる事無く終わってしまう。

片やこのお話、エンダーの物語としては綺麗に終わっていても、これではやや食い足りなさが残るなぁ。
なんて思ってたらこの話、この後三千年後の未来のお話と、本書に直接繋がるこの後の地球のお話と、二つの流れに分かれたシリーズとして今も続いているらしい。
さもありなん。(オースン・スコットカード/早川文庫)

因みに2008年(予定)には映画化されるそうな。

2006年10月15日 (日)

天使と悪魔

Mi0l8hlf 「ダ・ヴィンチ・コード」と同じ、ラングドン教授が主役のシリーズ第一作目。
「ダ・ヴィンチ〜」は二作目で、読む順序としては逆になってしまった。
というのも文庫本の発売がそういう順番だったから(笑)。
まあ、どちらから読んでも問題ない内容だったけど。
(因みに文庫版は上・中・下の全三冊)

で、このお話、構成や展開がかなり「ダ・ヴィンチ〜」と似てる。
事件の実行役とは別に首謀者がいる事、相棒ともいえるヒロインがいる事、謎を1つ解くとさらに次の謎が現われる所、等々…。
マンネリに陥っても、このスタイルを今後も踏襲していくつもりなんだろうか…?

そうはいっても、話の出来そのものは素晴らしくいい。
凝りまくってて、よくまあこんな話を作ったなと感心する。
「ダ・ヴィンチ〜」よりもこちらの方が話は大掛かりだし、展開も派手で、個人的にはこちらの方が出来がいいように思う。
(その分、殺伐とした描写もあるけれど)
作中の様々な謎も、紋様(印)のデザインも、ほんとに全て作者の創作なんだろうか?

でも個人的には、この本が宗教と科学のお話でもあった事が一番興味深かった。
どちらもこの世の真理を追究しようとしている点は同じなのに、この二つは水と油のような関係だと、この本は示唆している。
いかにも西洋的な思想で、日本人にはあまりない価値観や考え方で、成る程なと。

ところで、本作で特別な関係になったはずのヴィットリアとは、次作「ダ・ヴィンチ〜」では縁が切れてしまってる訳で、これはどうにも納得がいかない(笑)。
となると、次の三作目ではソフィーとも縁が切れてるのかな、やっぱり。(ダン・ブラウン/角川文庫)

2006年9月 4日 (月)

家族八景

4gfdjbew 七瀬という、実はテレパス能力を持った女の子が、家政婦として様々な家庭で働く様子を描いた、八つの連作短編集。

一見ごく普通の家庭で暮らす人達が、実は腹の中で何を考えてるか、その普段知る事のない人の秘められた思考を、七瀬を通じて観察していく。
当然、そこにハッピーさや爽やかさなどあるはずもなく、あるのは欲と嫉妬に満ちた負の感情の坩堝。
それがやたらとリアリティがあるので、読んでて段々ブルーになってくる。
ある意味、これは作者の醜悪な人間性を見せられてるような気さえしてきて、ほんと筒井康隆が嫌いになりそう(笑)。

なのにこの作品、世間的には絶賛されているようで…。
まあ内容のネガティブさが、作品の良し悪しに直接関係しないにしても、にわかに信じ難い。

ところでこの作品はこの後二つの続編があるそうで、そちらはいずれも本作とは趣が違って、SF的色彩が強くなるらしい。
読むかどうかは別にして、ちょっと安心?(笑)(筒井康隆/新潮文庫)

2006年8月29日 (火)

サモアン・サマーの悪夢

Tkytwoep ハワイを舞台にしたミステリー。
ボリュームも少なく、会話主体でサクサク読めて、まあそれ自体はいい。
ただ“爽快なトリック・ロマン”なんて帯には書かれてるけど、特に大掛かりなトリックもなければロマンもないです、はっきりいって。
「土曜ワイド劇場」のような、小じんまりしたお話。

タイトルの“サモアン・サマー”とは、ハワイには珍しい、蒸し蒸しした夏の一時期の気候の事を指すらしい。
そして、悪夢…。
読んでる途中、このタイトルから幾つかのオチを想像したんだけど、その1つが(あくまで直感レベルの話だけど)期せずして当ってしまった。
喜ぶべきか悲しむべきか。
別に気分が悪くなるようなオチだったという訳ではなく、たださして感心するオチではなかったという事で。
まあ最後に少しひねりはあったけど。

でも小林信彦って、こういう文章も書くんだという意外さはあった。
良くも悪くも、凡庸なミステリー小説。(小林信彦/単行本)

2006年8月27日 (日)

唐獅子源氏物語

Rk3v3kl4 過去に映画にもなった、「唐獅子株式会社」の続編に当る、関西ヤクザが主役の連作コメディ短編集。
いや、パロディというべきか。
時事的なネタを取り上げるのがこのシリーズのコンセプトのようだけど、'80年代のネタはさすがに読んでて古さを感じてしまう。

それにしてもこの本の短編は、その出来に結構バラツキがある…というか、ぶっちゃけオチがぐずぐずな話も幾つかあったりする。
それも1つの味かもしれないけど、何となく作者が時々煮詰まってる感じがして…(笑)。
このシリーズの持つ、テンポ、笑いは相変わらずではあったけど。

余談だけど、筒井康隆の小説「富豪刑事」は、前作「唐獅子株式会社」のパロディと思われる部分が随所に見られる。(小林信彦/単行本)

2006年8月 7日 (月)

ゲド戦記3 さいはての島へ

Wxb4nlku ゲド戦記」は外伝も含め全六巻となっているけれど、長らく全三巻で終りとされていた。
つまり、この本でこれまでのゲドの物語は一端完結する。

そして今その最後を読み終えて、深い余韻に浸っている。
三冊とは言え児童書もどきな本で、文章量も決して多くはないし、実際一気に読めた。
けど、この三冊に、ゲドの幼少時から壮年に至るまでの半生が集約されてる。
最初はとにかく自尊心の塊だった少年が、その人生を通して獲得した死生観や哲学は、最初から読んできたものにとっては、特別な感慨がある。

因みに今回、前半はややミステリー風味の効いた話で、毎回色々趣向を凝らすなと感心する。
また、本作も主人公はアレンという若い王子であり、ゲドではなかった。
結局、ゲドが主観的に語られたのは、一巻だけ。
けれど最後まで読んだ今、やっぱりこれはゲドの物語だったと実感できる。
そしてそのエンディングに、深く感動できた。

私の蔵書はこの三冊でおしまい。
四巻以降は、一度終った話を再開する事もあって、雰囲気が大きく変わってしまうらしい。
あまりに綺麗に終わってるだけに、続けて読もうかやや迷う所…。

因みに現在公開中の映画版は、この三巻がベースであるものの、概要と主な登場人物以外は、全く別物と言っていい位に違ってた。(アーシュラ・K・ル=グウィン/単行本)

2006年7月31日 (月)

ゲド戦記2 壊れた腕輪

Eehbltay しょっぱなから肩透かしをくらった。
読んでも読んでも、ゲドが出てこない(笑)。
ある程度読み進める内に、この本の主人公はゲドというより、むしろテナーという女性のようだと分ってくる。
だけど、それにしても彼女の生い立ちと状況描写で、全体の1/3以上も費やされると、少々ダレてしまうのは致し方ないでしょう。
まあこれはこれで楽しめるけど。
ただ1巻があれほどの冒険譚であったのとは裏腹に、何だかダライ・ラマの話を読まされてるような気分になった(笑)。

そして、それだけ長い前振りだったのに、事は意外なほどあっさり終わってしまう。
そして終わった後の話があるのが、また意外といえば意外。
余分なエピローグのようで、実はこここそがこの本の肝なんだろうな。

結局作者の描きたいのは、人の心の光と影であって、既に達観の域に達してるゲドでは、主役にしずらいという事なのかもしれない。(アーシュラ・K・ル=グウィン/単行本)

2006年7月30日 (日)

ゲド戦記 1 影との戦い

Rmqm0w5y こんなにいい本だとは思ってなかった。
長らく書棚の飾りにしていた事をちょっと後悔したほど。

一応児童書の体裁でもあり、文章は総ルビに近い感じだし、文字も大きく、ボリュームもそんなにない。
文章も簡潔で、こまごまとした状況描写や心理描写もあっさりしたもの。
なのに読んでて、情景がこれほど脳裏に浮かんでくるものか。
行間と言うものをこれほど感じさせられた事なんて、久しくなかった。

一話完結の全五巻の本で、第一巻は主人公が魔法学校に入って、色々な体験を通して、心身ともに一人前の魔法使いになるまでのお話。
典型的な冒険ファンタジーで、その世界観も今となっては目新しいものではないかもしれない。
でも、読み出すと止まらない。
そして読み終わった時、心地よい余韻がしばらく残る。(アーシュラ・K・ル=グウィン/単行本)

2006年7月16日 (日)

ブロードウェイの自転車

C8g8epta 昔、「ニューヨーカー短篇集」なる翻訳本を読んだ事がある。
ちょっと洒落た大人の短編集という事で、当時耳にしていたのだ。
でも読んでみて、その良さがさっぱり分らない。
分らないのは自分が子供だからとも思ったが、いやこれは翻訳のせい、もしくは民族性から来る価値感の違いのせいだと、思うことにした(笑)。
それからしばらく後に、見つけたのがこの本。
日本人作家による、10の短編からなるニューヨーカー短編集もどき(笑)。
大島弓子さんの表紙にグッと来た事もあって、即買い。
でも、その後長らく書棚の飾りだったものを、ようやく開いて読んだ訳で…(笑)。

やっぱりピンと来なかった。
でも分かった事もある。
結局、この手の短編にとりたてて意味なんてないという事が。
都会に暮らす人々のある1シーンを切り取って描写する事で、街(マンハッタン)の空気感を感じさせよう…そういう主旨のものであって、それ以上のものではない。
かつての私は、そこで交わされる言葉に何か深い意味があって、一見して分らないけどオチもちゃんとあるはずだと、信じて疑ってなかった。
子供でした(笑)。

でもそれなら私としては、わたせせいぞうの描くような、叙情性のある世界の方がしっくりくるなぁ。(矢作俊彦/単行本)

2006年5月24日 (水)

はだかの太陽

Nfdcnyez 先日読んだ「鋼鉄の都市」の続編に当る。
前作は特別良かった印象もなかったので、ことさら期待もしてなかったのだけど、良い意味で予想は裏切られた。
今度はちゃんと推理小説になっている。
それも結構本格的。
舞台が地球から文化・風習の違う別の惑星でのお話になる事で、主人公と読者が同じ状況、同じ予備知識で考えられる。
一方で未来社会、つまりロボットのいる人間社会が今度どうなっていくかも暗示している点で、紛れもないSF小説でもある。
重層的なお話で、古臭さも感じる事なく、面白く読めた。
特に後半は一気に読んだ。

そして物語は、どことなく続編を匂わせる形で終る。
実際、この話は「夜明けのロボット」「ロボットと帝国」へと繋がっていく事を、先ほど知りました(笑)。
しかもその後作者の別シリーズである「銀河帝国興亡史」へとゆるやかに繋がっていくという…。

どこまで付き合えというのでしょうか(笑)。(アイザック・アシモフ/早川文庫)

2006年5月 7日 (日)

六番目の小夜子

9f_hqkur 以前友人に貰った本。

ホラー小説と噂に聞いてたのでどうかなぁと思ってたけれど、読んでみると全くそうじゃなかった。
徐々に緊張を煽るような筋立てにはなってるけれど、別に殺人もなければ超常現象もない。
ミステリー要素は若干あるかな。
でも基本的には、学園青春小説というべきものでしょう。
怪し気な学校伝説が話のベースにはあるけれど、それも受験生としての不安な精神状態が過剰反応させただけと、私には写った。
(そう思うか思わないかが、この小説を楽しめるかどうかの分かれ目かも知れない)

本自体のボリュームはあまりなく、必然的に登場人物の心理描写もそれ程ある訳ではない。
でも全体的に妙に雰囲気があるのは、逆に語りすぎてないからだろうか。
一読して全てを理解できたとは言えない気もするし、再読すれば見えてくる部分もあると思う。
私としては、あえて再読したいとまでは思わないけど(笑)。(恩田陸/単行本)

2006年4月25日 (火)

毒猿

3ab8nxgi シリーズ2作目。
1作目を読んでからまだそう経ってない。
それだけに前作とは随分違うなという印象が残った。

本作は1人の台湾人暗殺者を中心に、台湾マフィアと日本ヤクザと警察が入り混じった争いのお話であり、登場人物も多ければドンパチも派手。
そのままハリウッド映画になりそうな感じさえする。

話にメリハリもあるし、流れるような展開で、あっという間に読み終えた。
ただ世間が絶賛するほどのものは感じられなかったかなあ。
前作と違ってエンターテイメント性を意識的に高めた事で、別の何かを失った…そんな感じがする。
それがいいのか悪いのか、何ともいえないけれど。(大沢在昌/新書)

2006年4月 2日 (日)

新宿鮫

Qrgcri7o ここまでハードボイルド小説だとは思ってなかった。
新宿が舞台という事で、多少殺伐とした感じはしても、いわゆる刑事ドラマの類と漠然と思ってた…。
読み手を選びそうな小説だという気はする。
その中で、晶という女性ロッカーの存在が、この物語の殺伐とした雰囲気に華を添えていて、それが唯一の救いかな。

ただ、結構技巧を凝らした小説で、少しザッピング(2人の視点)の構造になっていたりもする。
主人公の視点から、時々全く関係のない人物の視点に切り替わるのだけど、それが最後に収れんして行く所は、うまいと思った。(大沢在昌/新書)

2006年3月24日 (金)

ダ・ヴィンチ・コード

5xrtdxog 文庫本で買い求めた。
上・中・下巻の3冊だけど、最初の10ページを読んだだけで、この本がただものではないと感じさせる。
あっという間に読み終えてしまった。

読む前は、もう少し重厚な作品かと思ってたら、実は軽いタッチで読み易い。
また、本格推理小説とばかり思ってたら、そうじゃなかった。
(提示される謎は、少なくとも専門知識がないと絶対解けないものばかり)
物語全体が逃亡劇といった感じなので、常に緊張感の途切れる暇のない展開は、読んでてちょっと疲れさせる感はあったかな。
あと、タイトルでもあるダ・ヴィンチの扱いは、予想と少々違ってた。
捉え方にもよるんだろうけど、私にはタイトルにするほどダ・ヴィンチが話の本筋に絡んでるようには思えなかった。
これは宣伝目的から戦略的につけたタイトルでしょう、きっと。

ただ、そうした事でこの本の面白さが損なわれてる訳では決してなくて、読み終えた今、かなりの満足感がある。
殺人事件解決後の展開はおおっと唸ったし、全ての謎にきちんと答えを出した所、少し余韻を残すあの終わり方も、私個人としては好ましい。

あ、でも最後に出てくるソフィーと関係する“あの人”は、全てを知ってたのでは?
だとしたらこの物語は根本的に成立できなくなる気も…(笑)(ダン・ブラウン/文庫)

2006年3月20日 (月)

鋼鉄都市

Iwbkgimu 2004年に公開された映画一昨年に公開された映画「アイ・ロボット」の原作本。
ただし、本書と映画は、世界観や一部キャラクターの名前などを除いて、内容は大きく違う。

結論から言うと、まあまあかなぁ。
悪くはないんだけど、目新しさが特に感じられない。
ただ、そもそもこれが書かれたのが1950年頃。
SF小説としての鮮度を失うには、十分すぎる時間か…。
映画が原作と大きく内容を変えてあったのも納得がいく。
むしろ書かれてから50年以上経った今読んでも、SF的設定に殆ど違和感を感じない事を評価すべきなのかもしれない。

ただ推理小説としては、少なくとも主人公と同じように推理するための材料を読者は提示されておらず、その点での世間の評価には、ちょっと納得できない。
まあ主人公の推理の過程を辿る事は、それはそれで楽しめたけれど。

とりあえず、続編「裸の太陽」は読むつもり。(アイザック・アシモフ/文庫)

頭の中がカユいんだ

crdgodxd 中島らもの半自伝小説。
ずっと前に友人に勧められて買って、そのまま本棚の飾りにしていたもの。
今頃になって読んでみると、あっという間に読み終えてしまった。
面白い。

作者曰く、この本は特に笑いを志向していないとの事だけど、実際は結構笑える。
ただ、どこかしら哀切さを含んだ笑いではあったけど。
あとがきで著者がこの小説を「痛痒く、美しく、糞の匂いがしつつも透明」なんて書いてるけど、本当にそんな感じ。

4つの話が入ってて、その中でも本のタイトルにもなっている中編を読んだ時、作者の破天荒ぶりに軽い感動を覚えた。
そして出てくるキャラクターの多くに、妙なシンパシーを感じるのは、舞台が大阪で、そして私が大阪人だからだろうか。
そんな事を考えてて、ふとこの小説に流れる雰囲気が、「じゃりんこチエ」にどことなく似ている事に思い至った。

可笑しいんだけどちょっと哀しい…そんな本。(中島らも/文庫)